「何が起きたか」より先に、ボールの場所を言う シャルケの音声実況が客席をつなぐ
シャルケ04は、ドイツ西部ゲルゼンキルヘンのクラブだ。本拠地では2001年から、視覚障害のある観客へ試合を伝える「クナッペン・コメント」が続く。実況者が最初に言葉へ置くのは、感想ではなくボールの場所だ。
新しい競技場と同じ2001年に始まった
現在のフェルティンス・アレーナが開いた2001年、視覚障害者向け実況も始まった。ミヒャエル・シュティンペルは2001-02シーズンから、トーマス・クラヴィンケルは2001年から担当し、マーレン・グリュプナウは2011年に加わった。実況者は、音声解説の研修を行う団体T_OHRの定期研修にも参加する。20年以上続いた理由は、同じ人が話し続けたからだけではない。担当者が技術を学び、次の試合へ持ち越す運営になっている。
「何が起きたか」だけでは、位置が分からない
実況チームが重視するのは、ドイツ語で「Verortung」と呼ぶ位置の説明だ。誰がボールへ触れたかに加え、ピッチのどこにあり、どちらへ動いたかを言葉にする。担当者のアンドレアス・シュポーンは、一般的なラジオ実況との違いを「何が起きたか」だけでなく「どこで起きたか」も伝える点に置く。ドイツサッカー連盟(DFB)も、具体的なボール位置を優先すると説明している。
試合後の会話へ入れる実況
グリュプナウは、情報が不正確だったり、実況者の感想に偏ったりすると、聞き手が試合後の会話から外れてしまうと説明する。目的は90分を聞き取れるようにすることだけではない。周囲の人と同じ場面について話せるだけの材料を渡すことも含まれる。正確さを求める理由は、放送の形式より、その後の会話にある。
12ユーロの席から、無料配信まで
視覚障害者向けの席は12ユーロで、同伴者1人と受信機が含まれる。席はX、Yブロックに用意されるが、音声はアレーナのどこでも受信できる。アプリとウェブの無料配信は、キックオフのおよそ30分前に始まる。DFBが2023年8月に開いた担当者会議には約80人が参加した。DFBによると、新型コロナ禍以降、多くのクラブが無料配信を始め、音声解説を「包摂的なファンラジオ」として使う動きが広がった。
