2万5000人が立つ南スタンドの下で、若者が差別を考える BVBの「試合のない教室」
ボルシア・ドルトムントの南スタンドは、試合日に2万5000人超が立って応援する場所だ。その数メートル下では、試合のない日に若者が差別や異文化理解を学ぶ。2004年に15台のパソコンから始まったBVBラーニングセンターは、熱狂の場所を無料の政治教育に使っている。
イングランドで見たのは、平日に空くスタジアムだった
2003年12月、ドルトムント市の子ども・青少年委員会の提案を受け、ファンプロジェクトの職員二人がイングランドへ向かった。プレミアリーグのクラブが、平日に空くスタジアムの部屋を若者の学習へ使う「Study Support」を調べるためだ。帰国後、ファンプロジェクトと市の青少年局がドルトムント版をつくり、BVBが本拠地の部屋を提供した。クラブの社会貢献は、試合日の催しではなく、使われていない時間と空間を開けるところから始まった。
15台のパソコンから、南スタンド下の二部屋へ
センターは2004年12月、15台のパソコンを備えた研修室として開いた。利用が増え、2008年にはもう一室が加わった。現在の教室は、ジグナル・イドゥナ・パルクの南スタンド下にある。BVB公式は、無料の校外政治教育として、勇気ある行動、異文化理解、差別、インクルージョンを主なテーマに挙げる。インクルージョンは、障害や出自などの違いによって参加から外されないようにする考え方だ。
なぜ普通の教室より、スタジアムが若者へ届くのか
対象は、従来の政治教育では届きにくい社会環境にいる若者が中心だ。授業にはスタジアム見学やクラブ博物館ボルセウムの訪問を組み合わせる。センターは、BVBやサッカーに強い関心がない若者にも、特別な場所が学習意欲を高めると説明する。クラブの知名度を答えとして渡すのではなく、教室へ入るきっかけに使う。2万5000人という数字は参加者数ではなく、歓声の場所と学びの場所がどれほど近いかを示している。
ドルトムントの一室が、全国19拠点の一つになった
BVB公式によると、センターは2014年設立の「Lernort Stadion」に属する全国19拠点の一つだ。Lernort Stadionは、プロクラブの競技場を政治教育の場にする団体である。各拠点は地域やクラブの歴史に合わせて講座を組む。ドルトムントでは2009年、100学級がサッカー界と学校の右翼的傾向を学ぶ企画も行った。客席の問題を警備へ任せきらず、試合のない教室で若者が考える時間へ変えている。
