一社の名ではなく「セラミック」 ビジャレアルが本拠地を地域産業の共同看板にした
スペイン東部バレンシア州のビジャレアルCFは2017年、長く「エル・マドリガル」と呼ばれた本拠地を「エスタディオ・デ・ラ・セラミカ」へ改称した。日本語なら「陶磁器のスタジアム」。一社の企業名を掲げる命名権ではなく、複数の地元企業が町の主産業をまとめて見せる仕組みだった。
92年続いた地名が、産業名へ変わった
スタジアムはクラブ創設と同じ1923年に開場した。1925年からの「エル・マドリガル」は、建設地周辺の地名に由来する。転機は2017年1月。南側外壁の改修とともに、クラブは名称を「エスタディオ・デ・ラ・セラミカ」へ替えた。ラ・リーガは、町の陶磁器産業へ敬意を示し、新しい経済機会を開く改称だったと説明する。長く親しまれた地名を一企業へ渡すのではなく、地域の仕事そのものへ置き換えた。
競合する会社が、一つの外壁に並んだ
発表時にはパメサ、ポルセラノサ、アルヘンタ・セラミカが主要スポンサーとなり、タウ・セラミカなど複数社も参加した。扱う範囲はタイルから釉薬や色材、加工技術まで広い。陶磁器を製品にする工程が一つの外壁に並んだ。フェルナンド・ロイグ会長は当時、参加企業がスペインの陶磁器部門の30%を占めると説明した。2017年の発表時に示された参加規模からも、名称の主語が一社より広いことが分かる。
51%は、県の工業で占める割合
ビラ=レアルがあるカステリョン県には、スペインのタイル産業が集中する。業界団体ASCERとPwCの2023年推計では、タイル製造と工業系の関連事業が生んだ付加価値は26億8300万ユーロ。県の工業部門が生む付加価値の51%に当たる。分母は工業部門の付加価値で、県全体のGDPとは別の数字だ。陶磁器が製造、材料、機械の仕事を結ぶ地域経済の中核だと分かる。
スタジアムの外でも、陶磁器を着る
地域産業の表現はユニフォームにも広がった。クラブは2024-25シーズンのユニフォームを「大地から生まれた」と名付け、生地に陶磁器を思わせる模様を入れた。スタジアムでは企業名が並び、ユニフォームでは産業の素材感を語る。クラブは競合する企業を一つの公共的な言葉の下へ集め、町が何で働いてきたかを国内外の中継へ載せた。エスタディオ・デ・ラ・セラミカの主語は、会社よりも広い産業集積だ。
