歓声がつらくても、試合を諦めない サンダーランドが親子と作った感覚観戦室
スタジアムの歓声や人混みは、感覚に強い負担を受ける人の観戦を難しくする。サンダーランドは2015年、ピッチを窓越しに見られる感覚観戦室を設けた。始まりは、自閉スペクトラム症の息子ネイサンと試合へ行きたかったピーター、ケイト・シッピー夫妻の提案だった。
ラウンジへ移れる席を買っても、最初の試合で行き詰まった
シッピー夫妻は2014-15シーズン、通常席がつらくなればラウンジへ移れるシーズンチケットを試した。ネイサンには、それでも歓声や周囲の刺激が大きかった。夫妻は、静かな室内から試合を生で見られる空間をクラブへ提案した。地域の特別支援学校などを通じて3000筆を超す署名を集め、クラブとの話し合いを重ねた。個人の観戦の困りごとが、設備を変える要望になった。
2015年の開幕戦、窓のある部屋が観客席になった
ネイサン・シッピー感覚室は、2015-16シーズン最初のホームゲームで開いた。室内には遮音、柔らかな家具、感覚を整える活動用具があり、窓越しにピッチを見られる。利用者は室内で観戦を続けられ、状態に応じて屋外席へ移ることもできる。音から離れた場所を通路の途中に置くのではなく、そこ自体を試合が見える観客席にした。
現在は1試合6枠、利用者一人に同伴者一人
2026年8月更新のクラブ案内では、ホームゲームごとに利用者6人分を用意し、利用者と同伴者は1対1としている。希望者は事前にフォームを提出し、クラブの障害者アクセス担当者が空き状況を連絡する。試合前には、静かな日に入場経路、座席、トイレなどを確かめる見学も申し込める。部屋だけを造るのではなく、予約から当日の移動までを観戦支援に含めている。
家族の提案が、2016年にリーグの整備支援へつながった
プレミアリーグは2016年、BT、障害者スポーツ支援団体Lord's Taverners、シッピー・キャンペーンと組み、感覚観戦室を整備するクラブへ資金を出す制度を始めた。リーグはサンダーランドの部屋を、クラブに設置された最初の例として紹介した。2018年にはサンダーランド自身も2室目を開設した。ネイサン一家が求めた一つの部屋が、他クラブの設備とリーグの支援制度を動かす先例になった。
