芝を外へ出せないから、地下へ ベルナベウがつくった「ピッチの収納庫」
レアル・マドリードの本拠地サンティアゴ・ベルナベウは、天然芝を6枚に分けて地下へしまう。周囲は道路、住宅、オフィスに囲まれ、スタンドの外へピッチを逃がす余地がない。都市の真ん中で多目的化するため、芝を横ではなく下へ動かした。
郊外の空き地では使える「横」が、ベルナベウにはなかった
サンティアゴ・ベルナベウは、スペインの首都マドリードのチャマルティン地区にある。周囲には大通りと建物が迫る。設計を担ったスペインのエンジニアリング会社SENERは、フィールドを競技場の外へ出せない都市型スタジアム向けに、芝をトレーごと地下へ移す仕組み「Hypogea」を開発した。建て替え先を郊外へ求めず、今ある住所で使える時間を増やす選択だった。
地下は倉庫ではなく、芝を育てる作業場になった
地下の保管空間は「ヒポゲウム」と呼ばれる。芝は光と風から離すだけでは傷むため、内部には換気、空調、照明、散水、監視の設備が入る。グラウンドスタッフも中へ入り、状態を確認できる。レアル・マドリードは2023年9月、カルロ・アンチェロッティ監督が稼働中の設備を訪れた様子を公開した。試合がない日は、天然芝を地下で維持する運用が始まっていた。
6枚で9000トンを、水平と垂直に動かす
英国土木学会によると、可動ピッチは6枚のトレーに分かれ、1枚の重さは1500トン。合計は9000トンになる。SENERの機構は各トレーを水平に動かした後、地下の保管位置へ垂直に下ろす。試合仕様から別イベント仕様への転換は5時間未満とされる。9000トンという数字は芝生だけを量った値ではなく、芝を載せて動くトレー全体の規模を表す。
NFLの日、天然芝は地上から消えていた
2025年11月16日、ベルナベウではNFLのマイアミ・ドルフィンズ対ワシントン・コマンダーズが行われた。競技場公式は、天然芝をヒポゲウムへ収めた上で、アメリカンフットボール用のフィールドを用意したと説明する。ピッチを守る設備と、地上を別用途へ替える工程が対になっている。都市型スタジアムの限られた敷地を、サッカーの試合日以外にも使うための仕組みだ。
