医療、体力、心理を一つの判断材料へ ACミラン「MilanLab」が2002年に始めた仕事
ACミランは2002年、練習施設ミラネッロにMilanLabを設けた。けが人を治療する医務室の拡張ではなく、医療や体力などのデータを集め、監督や経営陣を含む複数部門の判断を支える構想だった。ベテランの長い現役生活で知られた仕組みを、クラブが公表している役割からたどる。
2002年、ミラネッロに選手支援の拠点ができた
MilanLabは、北イタリアのクラブACミランがミラノ郊外の練習施設ミラネッロに設けた研究・支援拠点だ。クラブ公式は、ベルギー出身の医療従事者ジャン=ピエール・メールスマンの構想から2002年に始まり、フィジカルコーチのダニエレ・トニャッチーニが開発の中心を担ったと説明する。目的は、治療だけに限らない。選手の日々の状態を把握し、健康維持とけがの予防へ生かすことにあった。
全部署が使う「判断支援」に、ニューラルネットワークを加えた
2018年のFIFAインタビューで、トニャッチーニは当初の依頼を「意思決定支援システム」と表現した。医療班とスポーツ科学部門に加え、経営陣、監督、マーケティングなども過去のデータと経験を使う構想だった。分析には人工ニューラルネットワークも用いた。これは人間の脳の神経回路を参考に、多数のデータから傾向を探す計算手法だ。選手起用を自動で決めるのではなく、離れた部署が同じ選手について判断する材料を増やした。
40歳前後までプレーした選手を、ラボだけで説明しない
当時のミランでは、パオロ・マルディーニやアレッサンドロ・コスタクルタが40歳前後まで現役を続けた。MilanLabが選手寿命を延ばしたという紹介は多い。ただ、独立媒体These Football Timesも、カルロ・アンチェロッティ監督の采配、選手層、医療陣の仕事が同じ時期に重なったと指摘する。公開資料にラボ単独の効果量は示されていない。長くプレーした事実と、施設だけの成果だという評価は分けておきたい。
2021年の更新で、男子、女子、育成へ範囲が広がった
ACミランは2021年、MilanLabを全面的に更新した。現在の公式説明は、研究と科学的根拠を重視し、男子・女子のトップチーム、若手主体のミラン・フトゥーロ、育成年代の医療・パフォーマンスデータを扱うとしている。2002年に始まった判断支援は、特定のスターを支える話から、複数チームの日常業務へ広がった。MilanLabの長さは、同じ部屋が残った年数より、データを使う対象が増えた過程に表れている。
