りんごの木2本から6品目の販路へ 福島ユナイテッド「農業部」が選手を畑へ送る理由
福島ユナイテッドFCは2014年、県産農作物への風評被害に向き合うため「農業部」を始めた。最初に買ったのは、りんごの木2本だった。選手とスタッフが生育作業から収穫、販売まで関わり、2026年には6品目を扱う。クラブの発信力が、畑と試合会場を結ぶ販路になった。
始まりは、農園との共同広告ではなく木の購入だった
福島ユナイテッドFCは、福島市を中心に県内で活動するJリーグクラブだ。2011年の東日本大震災と福島第一原子力発電所事故の後、県産農作物は風評被害を受けた。クラブは2014年、福島県石川町の大野農園と取り組みを始めた。当時のゼネラルマネージャー竹鼻快は、紹介を通じて農園と出会い、本気で農業へ関わる形としてりんごの木を2本買ったと振り返っている。小さな本数には、宣伝だけを請け負わず、育てる側へ入るという選択が表れていた。
選手とスタッフは、春の作業から収穫まで畑へ通う
Jリーグの2021年表彰資料は、選手とスタッフが農家と一緒に春先の生育作業から収穫まで一貫して関わると説明する。収穫物はイベントや試合会場で売り、2020年6月には農業部のオンラインショップも始めた。選手の役割は農業技術を教えることではなく、作業を経験し、自分の言葉とクラブの接点で産地を伝えることだ。農家だけでは届きにくかった別地域のサポーターへ、クラブが売り場を持ち込んだ。
桃、米、西洋なし。季節の違う6品目をつないだ
クラブの2026年2月発表では、農業部が扱うのは桃、りんご、アスパラガス、米、ぶどう、ル・レクチェの6品目。ル・レクチェは香りと滑らかな食感で知られる西洋なしだ。果樹だけでなく米と野菜も入り、収穫期の違う生産者と一年の複数時期に仕事が生まれる。J1、J2クラブの会場にも出店しているため、ホームゲームの来場者だけを相手にする売り方からも外へ出た。
2021年はJリーグ、2026年は農政局が評価した
農業部は2021年、Jリーグの社会連携活動を表彰する「シャレン!アウォーズ」でパブリック賞を受けた。農家や生産者のつなぎ役となり、オンライン販売まで広げた点が評価された。2026年1月には、東北農政局が選ぶ地域の優れた取り組み6団体の一つにも入った。ここでの6は商品数とは別で、表彰された団体数を指す。二つの評価が見ているのは、単発の応援企画より、育てる、売る、届ける仕事を12年続けたクラブの役割だ。
