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850ユーロを集めても、一人一票 ザンクト・パウリが2万人超へ渡したスタジアムの決定権

FCザンクト・パウリは、ドイツ北部の港町ハンブルクにあるクラブだ。2025年11月、2万人超が参加する協同組合が、本拠地ミラントア・シュタディオンの運営会社の過半数を取得した。参加者が買ったのは個別の座席ではなく、協同組合の持分だ。クラブそのものの株式とも違う。850ユーロから始まる資金が、施設の所有と一人一票の意思決定へどうつながったのか。

持ったのは、座席ではなく運営会社の過半数

協同組合が取得したのは、ミラントア・シュタディオンの運営会社の過半数だ。個々の組合員に、土地や座席の区画を直接割り当てる制度はない。

クラブは引き続き試合を主催し、スタジアムを使う。施設を持つ会社の支配権を協同組合へ移し、クラブはその施設を競技に使う。この二つの役割を分けたことが、今回の資金調達の土台になった。

なぜ、大口投資家を選ばなかったのか

サポーター団体Football Supporters Europeの取材で、協同組合の理事ミリアム・ヴォルフラムは、検討された別案を挙げた。プロ部門を切り離す。外部投資家を迎える。商品化権を売る。協同組合は、そうした方法を避けながら資金を集める選択肢だった。

AP通信に対し、クラブの商務責任者ウィルケン・エンゲルブラハトは、スタジアム取得によってクラブの負債を想定より早く減らせると説明した。施設を手放すためではなく、資金の出し手を広げて財務負担を軽くする発想だ。

850ユーロのうち、持分は750ユーロ

募集時の1口は850ユーロだった。AP通信によると、750ユーロが出資持分で、100ユーロは手数料などに充てられた。複数口を申し込むこともできた。

ただし、議決権は口数に比例しない。Football Supporters Europeは、持分をいくつ持っていても一人一票だと説明する。多く出した人ほど票を増やせる株式会社とは違う。広く資金を集めても、総会での発言力は同じ一票にそろえた。

2万人超と約2900万ユーロが、所有権へ変わった

募集終了時の2025年4月、AP通信は参加者を2万1000人超、調達額を2700万ユーロ超と報じた。その後、Football Supporters Europeは同年11月、参加者が2万2000人超、金額が約2900万ユーロへ達し、協同組合が運営会社の過半数を取得したと伝えた。

数字が違うのは、集計時点が違うからだ。春の募集終了後も手続きと参加が続き、秋に所有権の移転へ進んだ。集めた額だけでなく、資金が何の支配権に変わったかまで見ると、協同組合の役割が分かる。

クラブと協同組合は、別の法人

協同組合はFCザンクト・パウリとは別の法人だ。クラブの会員制度と、スタジアムを支える組合員制度も分かれている。協同組合の議決権は、クラブ運営全般には及ばない。

その代わり、クラブの象徴であり大きな資産でもある本拠地については、外部の一社ではなく、多数の参加者が一人一票で監督する道を選んだ。ザンクト・パウリが渡したのは、観戦席の所有権より、施設を誰の資金と意思で守るかを決める仕組みだった。

参考記事FC St Pauli — cooperative formally takes control of the Millerntor stadium companyAssociated Press — participants, share price and financing rationaleFootball Supporters Europe — interview and completion of the majority acquisition