週50枚超の背番号、3台のバン キットスタッフが試合6時間前から動く理由
キットスタッフは、ユニフォームを洗うだけの係ではない。背番号を付け、選手ごとのサイズをそろえ、スパイクを運び、試合後の洗濯までつなぐ。イングランドのクラブとスイス代表の仕事を並べると、選手が当たり前に着替えられるまでに、どれだけ細かな準備が重なっているかが分かる。
背番号を付けるだけで、週50枚を超える
ウルヴァーハンプトン・ワンダラーズは、イングランド中部のクラブだ。用具部門を率いるショーン・ルイスは、アシスタント1人と非常勤2人のチームでトップチームを支える。
ルイスの見積もりでは、バッジ、番号、名前を付けるシャツは週50枚を超える。選手には試合用を2枚用意し、さらに予備の3枚目も印刷する。長袖か半袖か、ゆったりか細身かも選手ごとに違う。50枚という数字は販売用の在庫ではない。一試合を止めないために、同じ背番号を複数の条件で用意する量だ。
代表チームでは、3台のバンになる
大会になると、仕事は移動を伴う。スイス代表のキットマネジャー、ロジャー・カスパーは、EURO2024で26選手に加え、監督・コーチやスタッフの練習着、試合着、雨具、スパイクを管理した。
Reutersは、持ち込むスパイクを200個超と数えている。選手1人あたり約4組あり、担当者もカスパーを含め3人いた。荷物は3台のバンでスイスからドイツへ運んだ。準備は大会の数カ月前から始まり、現地では毎日洗濯を回す。試合だけを見れば90分でも、用具の予定表は移動日と練習日まで続いている。
同じシャツでも、注文は同じではない
ウルブズでは、丈やフィット感だけでなく、ハーフタイムに着替える選手の分も見込む。18歳未満の選手には賭博会社の広告を付けない。試合ごとの使用色はプレミアリーグへ提出し、変更が入れば用具側が組み直す。
スイス代表では、ソックスを切って使う選手と、そのまま履く選手がいた。ユニフォームが同じデザインでも、必要な形は一種類ではない。キットスタッフは、規則と選手の好みを一つのロッカーに収めている。
試合6時間前から始まり、終了後にも終わらない
ウルブズの本拠地モリニューでは、用具担当の試合日はキックオフ6時間前に始まる。シャツやグローブだけでなく、タオル、ベースレイヤー、ボード、コーヒーまで白い無地のバンへ積む。遠征時にクラブ名を出さないのは、盗難の標的になりにくくするためだ。
スイス代表のカスパーも試合4時間前に入り、前半をすべて見られるとは限らなかった。終了後は使用済みの用具を回収し、次の移動と洗濯へ進む。シャツが予定どおり掛かっている日は、仕事が目立たない。その「予定どおり」をつくるために、キットスタッフは観客よりずっと早くスタジアムへ入る。
