3500席を足す工事でも、ドッグランは残した FC今治が本拠地を『試合日だけ』にしない理由
愛媛県北東部の今治市にあるアシックス里山スタジアムは、2026-27シーズンへ向けて南北ゴール裏の増築計画を進めた。目標は約3500席を足し、全体を約8900人規模にすること。ただし工事で動いたのは観客席だけではない。北側にあったドッグランも場所を変えた。クラブは客席を増やしながら、試合のない日に来る理由を残そうとした。
2023年に開き、3年後にもう変えた
スタジアムが開場したのは2023年1月29日だった。クラブが掲げたのは、完成形を固定するのではなく、地域の使い方に合わせて変わる『成長するスタジアム』という考え方だ。
最初の大きな変更が、2025年9月に発表された増席だった。南北のゴール裏を中心に約3500席を足し、全体で約8900人の収容を目指す。3500人は新しい総数ではない。既存のメイン、バック、ゴール裏を合わせたスタジアム全体に加わる席数だ。
ゴール裏は約1400席から大きくなる
2026年2月の工事報告によると、増築前の南北ゴール裏は合わせて約1400席だった。そこへ約3500席を追加する。新設分だけで、以前のゴール裏全体を大きく上回る。
増やす場所を両ゴール裏に置いたため、観戦時の風景も変わる。クラブは、声援がピッチへ届きやすい空間を狙うと説明した。入場者の上限を上げるだけではない。ゴール裏を、より多くのサポーターが集まる場所へ変える工事でもある。
北側のドッグランは、なくさずに移した
増席工事で、北ゴール裏にあった里山ドッグランは同じ敷地内の里山サロン駐車場付近へ移った。2026年3月13日に再開し、クラブは6月25日に休憩所を加えて改めてリニューアルすると発表した。雨や日差しを避けられるコンテナ型の休憩所は、海運会社Ocean Network Expressの支援で設けるものだった。
客席とドッグランは、同じ土地を使う。そこでクラブが選んだのは、試合日の席を増やすために日常の利用を終えることではなく、位置を組み替えて両方を残すことだった。
畑、カフェ、福祉施設もスタジアムの一部
敷地にはカフェの里山サロン、屋外イベントスペース、芝生広場がある。クラブハウスの会議室やアウェー用ロッカーは、イベントにも貸し出す。里山ファームでは、FC今治、地元の社会福祉法人来島会、FC今治高等学校が花や野菜を育てている。来島会が運営する『コミュニティビレッジきとなる』は、障がいのある人や子どもが地域と関わりながら学ぶ施設だ。
クラブが使う『365日賑わう』は、毎日の来場者数を示す実績ではなく、目指す姿を表す言葉である。それでも、増席の最中にドッグランを移して再開し、畑や貸出施設を残した。『365日』を、試合のない日の使い道につなげた判断だ。大きくなるのは観客席だけではない。試合日と日常を同じ敷地に収める方法も、工事のたびに変わっている。
