昇格申請を出さなかった翌年、主将は理学療法士を辞めた ウルブズ女子のプロ化
情報確認日: (JST)
アンナ・モーフェットが昇格の1週間後に退職を申し出た相手は、理学療法士として働く職場だった。ウルブズ女子の主将は、それまで別の仕事を続けながらイングランド3部でプレーしていた。2026年5月にWSL2昇格を決めると、クラブは選手をフルタイムで雇う初のシーズンへ動いた。前年には、最終戦が終わってから、昇格申請を出していなかったと選手へ伝えている。同じクラブが一年で何を変えたのか。
最終戦のあとで知らされた「申請なし」
ウルブズは2024-25シーズン、イングランド女子3部の北地区を2位で終えた。首位ノッティンガム・フォレストとは3ポイント差だった。最終戦でリヴァプール・フェッズに6-0で勝った後、選手たちはもう一つの事実を知らされた。クラブは2部ライセンスを申請しておらず、仮に首位になっても昇格できなかった。
申請の意思表示は2024年12月20日、正式書類は2025年2月21日が締め切りだった。クラブには、平均600人以上のホーム観客を集められる根拠も求められた。女子部門責任者、監督とコーチ、医療・フィジカル担当、広報、安全管理や選手福祉の担当者を置く約束も必要だった。ピッチで1位になる前に、2部でチームを動かせる組織を示す審査だった。
MFベス・メリックは、スタッフや選手へ事前に説明がなかったことを「誠実さと透明性」の問題として批判した。クラブは当時、The Guardianから理由を尋ねられたが回答しなかった。申請しなかった理由は公表資料から確定できない。
2位からプレーオフを勝ち抜き、今度は上がった
翌2025-26シーズンも、ウルブズのリーグ順位は北地区2位だった。今度は昇格プレーオフへ進み、南西部のクラブ、プリマス・アーガイルを破った。シャーロット・グリーングラスの得点で、2026年5月にWSL2昇格が決まった。
2部で最初に当たったのは、昇格候補に挙げられていたニューカッスル・ユナイテッドだった。2026年9月6日、ウルブズはゲーツヘッドで0-2と敗れた。9月11日時点で、初のWSL2シーズンは1試合を終えたところにある。前年は書類の段階で閉ざされた2部の試合へ、今回は実際にたどり着いた。
主将が辞めたのは、理学療法士の仕事だった
主将モーフェットは、昇格の1週間後に理学療法士の仕事を辞めると伝えた。昨季から残った選手のうち、ほかにも別の仕事を離れた人がいる。クラブが女子トップチームをフルタイムのプロ運営へ切り替えたためだ。練習と試合を別の勤務の合間へ入れる生活はここで終わった。
クラブは昇格したチームから14人を残し、夏に11人を加えた。メル・ローリー、ジャスミン・マシューズ、ヤナ・ダニエルズら、女子1部WSLでプレーした選手も入った。昇格までを知る選手と、上のカテゴリーを知る選手を同じロッカールームへ置いて、初年度を始めた。
7枚のビブス、3個のボール、車内の事務所
ダン・マクナマラ監督が最初に受け持った練習には58人が来た。用意できたのはビブス約7枚とボール3個。事務作業は古いフォード・フォーカスの運転席でしていた、と本人は振り返る。58人は当時の登録選手数ではなく、その練習に集まった人数だ。大勢を受け入れながら、基本的な用具と仕事場も足りなかった。
いまはウルヴァーハンプトン西部コンプトンのサー・ジャック・ヘイワード練習場に、女子専用の更衣用キャビン、会議・分析室、休憩場所、監督室がある。追加の練習ピッチは9月9日時点で整備予定だった。女子・少女部門責任者には、複数のWSLクラブで働いたラス・フレイザーが就いた。
運営側にも担当者を置いた。2026年8月に発足した正式な取締役会は、エグゼクティブ・チェアマンのネイサン・シー、1999年から女子チーム会長を務めるジェニー・ウィルクス、クラブ取締役ジョン・ボーウォーターの3人で構成される。戦略と女子・少女部門の統治に責任を持つ組織だ。前年の助言委員会は役目を終えた。
新加入選手の予定に、街を知る一日を入れた
開幕前、チームはウルヴァーハンプトン市内を回った。最初の訪問先の一つが、1966年に市内初のグルドワラとして開いたグル・ナーナク・サトサング・シク教寺院だった。グルドワラはシク教徒が集う礼拝所を指す。選手たちはそこでレスリングを体験し、音楽会館ザ・ホールズや市中心部も訪ねた。
本拠地モリニューでは、クラブ財団とウェスト・ミッドランズ警察による子ども向け活動を手伝った。博物館では、長くボランティアに支えられてきた女子チームの展示も見た。新加入選手が、練習場とスタジアムだけを行き来する前に、クラブ名に入る街と会う日をつくった。
2025年に出さなかった申請は、勝敗の外にある準備を問うものだった。翌年、ウルブズが初戦までにそろえたのは、フルタイム契約、専用の部屋、部門責任者、取締役会、そして選手が街を知る時間だった。WSL2の最初の90分は0-2で終わった。その時には、専用更衣室、部門責任者、正式な取締役会が実際に動いていた。
