直接たずねる前に静かな場所を、答えの後に支援先を 自殺予防をクラブの11項目へ
誰かの様子がいつもと違う。英国の新しい手引きは、その人へ「自殺を考えている?」と直接たずねてよいと書く。質問の前には静かな場所と時間を取り、答えの後にはクラブの責任者や専門支援へつなぐ。2026年9月10日に公開された「On Your Side」は、会話をGOALSの5段階、クラブの準備をStarting 11の11項目に分けた。FAとプレミアリーグは導入を表明している。ただし、9月12日時点で変更する規程や研修人数は公表していない。
GOALSは、質問の前後まで決める
GOALSは五つの英語の頭文字だ。Get readyでは、二人で落ち着いて話せる場所と時間を確保する。Open the conversationで普段との違いを伝え、Ask the questionで自殺を考えているかを直接たずねる。Listen and respondでは、遮ったり急いで解決策を出したりせずに聞く。最後のSupport and signpostで、適切な人や窓口へつなぐ。
公式案内は、確かな証拠がなくても、心配なら質問してよいとする。自殺について直接聞くことで、その考えを相手に植え付けることにはならないとも説明している。避けるよう求めるのは、悩みを小さく扱う言葉、道徳で説得する言葉、慌てて答えを押しつけることだ。秘密を守ると約束せず、必要な支援へつなぐ可能性を先に伝える。
「はい」と返ったら、次の支援へつなぐ
相手が自殺を考えていると答えたら、考えがどの程度切迫しているかを確かめる。手段や計画があるか、それをいつ実行しようとしているかを、落ち着いてたずねる。差し迫った危険がある場合は一人にしない。本人へ説明したうえで、組織の自殺予防責任者や福祉担当者、医療職などへ引き継ぐ。勤務時間外なら危機支援サービスや医療機関、緊急時には現地の救急サービスへ連絡する。
声をかけた人が診断や治療を担う手順ではない。公式案内は、本人の安全を信頼できる人か専門職へ引き継ぎ、その後も連絡を取るよう勧める。質問して終わらず、誰が次を担うかまで決めるのがGOALSの最後の段階である。
クラブ側には11の準備がある
組織向けのStarting 11は、担当者11人を置く制度ではなく、運営上の確認項目を11に分けたものだ。最初の五つは、責任者を決める、既存の規程へ組み込む、定期的に評価する、スタッフとボランティアを研修する、危機時と自殺後の対応計画を用意する、である。
残る六つは、競技生活の変化に合わせた支援経路をつくる、地域の相談先を把握する、会場や広報で支援情報を見えるようにする、役割や時期に応じて支援を変える、年間を通じて続ける、支える側にも相談と振り返りの場を設ける、となっている。会話を始める個人の判断と、研修、引き継ぎ、死後対応を用意する組織の責任を同じ資料に収めた。
契約が決まらない時期も支援経路の対象
11項目のうち、サッカーで具体的に使いやすいのが競技生活の変化への備えだ。例には、けが、メンバー外、引退、契約が決まらない時期、大会の前後が挙げられている。エリート競技では、試合に出ていない選手もチームの一員として扱うよう促す。アカデミーでは、負傷や不合格のときに指導者が変化を見つけ、競技外も含む進路を用意する。
地域クラブでは、仕事と競技を両立する選手や、運営を担うボランティアへの支援が課題になる。対象は選手に限らず、指導者、スタッフ、ボランティア、家族、観客まで含む。公式ページの「年間約4000万人」は英国でスポーツに参加する成人の規模で、自殺の危険がある人の数ではない。競技団体が接する人の多さを説明する数字だ。
FAとプレミアリーグは導入を表明した
On Your Sideを共同制作したのは、英国王室系慈善団体のロイヤル・ファウンデーション、英国規格協会(BSI)、支援先検索サービスHub of Hopeを運営する慈善団体Chasing the Stigmaである。ロイヤル・ファウンデーションによると、ツールキットにはスポーツと自殺予防の専門家や協力団体200超が関わった。土台にした英国規格BS 30480の制作に70超の組織と個人が関わったという公式説明とは、別の人数である。
9月10日の発表会は、リヴァプールにあるエヴァートンの本拠地ヒル・ディキンソン・スタジアムで開かれた。ロイヤル・ファウンデーションとロイターは、FA、プレミアリーグ、Team GB、British Cyclingが導入を表明したと伝えている。公開から2日後の9月12日時点では、FAとプレミアリーグが変更する規程、研修の対象人数、危機対応手順、開始日は公表されていない。
