他クラブの選手を、サン・マメスで表彰する アスレティックが始めた「忠誠」の賞
選手を表彰するなら、自クラブの功労者を選ぶのが普通だろう。スペイン北部ビルバオのアスレティックは違う。2015年から、プロ生活を一つのクラブだけで送った他クラブの選手にOne-Club Awardを贈っている。賞を通して語るのは、受賞者の成績だけではない。アスレティック自身が何を大切にするクラブなのかも見えてくる。
対象は「一つのクラブと契約し続けたキャリア」
One-Club Awardは、プロキャリアのすべてを一つのチームとの契約で過ごした選手をたたえる。最初の受賞者は、2015年のマット・ル・ティシエ。イングランド南部のサウサンプトン一筋だった選手だ。以後、ミランのパオロ・マルディーニ、バイエルンのゼップ・マイヤー、バルセロナのカルレス・プジョルらが選ばれた。
意外なのは、アスレティックの選手を表彰する賞ではないことだ。受賞者はホームのサン・マメスで、試合のハーフタイムにセンターサークルへ進む。男子はクラブの象徴的GKホセ・アンヘル・イリバル、女子はクラブのレジェンド、エリ・イバラが付き添う。自分たちの舞台を、別のクラブとの結びつきを祝うために使う。
2019年から、女子の歩みも同じ一覧に入った
2019年、賞は男子のOne Club Manと女子のOne Club Womanを並べる形になった。最初の女子受賞者は、スウェーデンのウメオIKで12シーズンを過ごしたマリン・モストロム。欧州大会を2度制したチームの中心だった。
2025年の女子受賞者ジョエル・マレーは、スコットランドのハイバーニアンで2004年から2024年まで20年間プレーし、507試合に出場した。引退後も女子トップのアシスタントコーチと育成部門の仕事を続けている。同年の男子受賞者ジェイミー・キャラガーは、リヴァプールで17シーズン、737試合。競技環境も知名度も違う二人を、一つのクラブで積み重ねた時間という同じ基準で紹介した。
アスレティックは、他クラブを通して自分たちを語る
アスレティックは、バスク地方とのつながりを持つ選手でチームを編成する独自方針で知られる。賞の公式説明が掲げる価値は、忠誠、献身、責任、フェアプレー、敬意。移籍回数だけを見るのではなく、クラブ、地域、ファンとの関係を自分たちの方針に重ねている。
キャラガーはSky Sportsに、一つのクラブで終えることを誇りに思うと話した。一方で、別のクラブを経験しなかったことへの小さな心残りにも触れている。移籍した選手の歩みを否定せず、自分が残ることで得た関係を説明した。この賞が示すのは、移籍しないことが唯一の正解だという結論ではない。ひとつの場所に残ると、どんな関係が積み上がるのか。その価値を、他クラブの選手を招いて語る賞だ。
