相談担当者を、法律より先に置いた アスレティック『Aterpe』の未成年保護
育成組織の安全は、監督やコーチの善意だけでは守れない。スペイン北部ビルバオのアスレティック・クラブは、未成年者が相談できる担当者と手順を『Aterpe』という制度にまとめた。2019年には担当者がバスク議会で制度を説明していた。スポーツ団体へ同種の役割を求めるスペイン法ができたのは2021年だ。
Aterpeは、バスク語で『避難所』
Aterpeはバスク語で『避難所』を意味する。クラブは、未成年者を守るために行ってきた仕事を一つの方針へまとめ、予防、研修、通報後の手順を明文化した。対象は育成部門の監督やコーチだけではない。理事会、職員、ボランティア、研修生にも、方針を知り守るよう求めている。
子どもの安全に関わる判断を、出場機会や評価を決める現場だけへ任せない。クラブ全体の責任として置いたことが、Aterpeの出発点だ。
通報は、内容を先に選別せず責任者へ渡す
現在の子ども保護責任者はロシオ・イバラで、クラブの透明性ページにも氏名が掲載されている。Aterpeの公式ページには電話とメールのほか、通常のクラブサイトから分かれた独立通報窓口がある。
未成年保護に関する通報を受けると、窓口担当者は内容を事前評価せず、直ちに子ども保護責任者へ渡す。そこでAterpeの行動手順が動く。相談者が最初の窓口で『扱うほどではない』と選別されないよう、受け渡しの順番まで公開している。
2021年、法律が保護担当者を義務づけた
スペインでは2021年6月4日、子どもと青少年を暴力から包括的に守る組織法8/2021が制定された。第48条は、未成年者と継続的にスポーツや余暇活動を行う団体へ、行政の行動手順を適用すること、実施状況を監視すること、保護担当者を置くことを求める。
子どもはその担当者へ不安を伝えられる。担当者は手順を周知し、暴力を把握した場合に必要な連絡を始める。アスレティックでは2019年10月、当時の担当者イニャキ・アロンソがバスク議会でAterpeを説明していた。専門担当者を置いた時期は法律より前だが、Aterpeが法制化を直接動かしたとは断定できない。
231人は相談件数ではなく、クラブ所属の未成年者数
クラブの透明性ページは、アスレティックの管理下にいる未成年者を231人としている。この数字は相談や通報の件数ではない。Aterpeの説明は、アカデミーだけでなく、財団の事業、外部プロジェクト、提携クラブの子どもも対象として挙げるため、231人を制度全体の対象総数とも読めない。
その後、アスレティック財団はラファ・ナダル財団とも協力し、保護担当者、行動規範、予防・対応手順の整備を進めた。クラブ内で作った仕組みを、別のスポーツ財団と共有する段階まで広げている。
公開されているのは、問題が起きた後の入口まで
Aterpeの公開ページからは、誰に連絡できるか、独立窓口が通報を誰へ渡すか、どの手順を動かすかを確認できる。一方、231人という所属人数だけでは、制度が何件の問題を防ぎ、通報後にどう改善したかまでは分からない。
これは『制度があるから安全だ』という証明ではない。現場の指導者とは別の相談先を置き、最初の通報を選別せず専門担当者へ渡す。その具体的な入口を、子どもや家族が読める場所に示した制度である。
