親が直接申し込めない「クラブの学校」 エヴァートンが13〜19歳を学びへ戻す仕組み
エヴァートン・フリースクールは、イングランド北西部リヴァプールにある13〜19歳の共学校だ。プレミアリーグのエヴァートンFCを名乗るが、選手を選抜する育成組織ではない。主流の学校とは別の環境を必要とする若者を、在籍校や自治体からの紹介で受け入れる。保護者が直接、席を申し込めないことに、この学校の役割が表れている。
選手を選ぶ学校ではない
学校は2012年9月に開いた。英国で公費を受けながら一般の自治体立学校より運営裁量を持つ「フリースクール」の一つで、主流校以外の学びを用意する「オルタナティブ・プロビジョン」に当たる。
英語や数学などの基礎科目に、職業教育、実習、ボランティアを組み合わせる。小人数の授業と個別の学習計画で、学校生活につまずいた若者を資格、進学、職業訓練、就職へつなぎ直す。エヴァートンの選手候補を探す学校ではない。
親が直接申し込めないのはなぜか
入学は紹介制だ。生徒が別の学校に在籍している場合はその学校が、在籍していない場合は自治体が紹介する。保護者は情報を問い合わせられるが、正式な紹介なしに席の相談や確約はできない。
学校公式は、資金と安全管理を紹介元と正式に合意する必要があるためだと説明する。家庭が空席へ応募する私立校とは入口が違う。学ぶ本人と家族を外す仕組みではなく、在籍校・自治体にも配置の責任を残す仕組みである。
学費を取らず、クラブだけにも頼らない
家庭は学費を払わない。在籍校に籍が残る場合はその学校、そうでない場合は自治体が費用を担う。開設時の資本費と立ち上げ費は英国教育省と合意された。
エヴァートンFCは、選手、施設、専門職、人材などへのアクセスを現物で提供する。クラブ名は看板だけではないが、学校の全費用をクラブが負担するわけでもない。支持クラブも条件ではなく、学校はリヴァプールFCのファンを含めて受け入れると明記している。
Ofstedは5分野すべてを最高評価にした
英国の教育監査機関Ofstedは2024年4月24日に査察し、教育の質、行動と態度、人格形成、指導と運営、16歳以降の課程という5分野をすべて「Outstanding」と評価した。2014年と2018年は「Good」だった。
5という数字はテスト科目の数ではない。学校運営を別の角度から見た評価項目だ。クラブとの関係が評価を自動的に生んだのではなく、Ofstedは授業、支援、生徒の行動、進路準備まで学校として調べている。
サッカーは入口でも、出口は一つではない
16歳以降のエヴァートン・フットボール・カレッジには、スポーツ開発やコーチングを学ぶ道もある。一方で、学校全体の目的はプロ選手を作ることではない。資格取得、進学、職業訓練、就職が並ぶ。
2024年4月、学校とカレッジは複数校を束ねるザ・ピープルズ・ラーニング・トラストへ移った。クラブとの関係を残しつつ、教育組織として支える範囲を広げた。エヴァートンが地域で育てているのは、選手になれる若者だけではない。
