1株10.75ユーロを世界へ レアル・オビエドを救った小口株主と大口投資の順番
2012年11月、スペイン北部アストゥリアス州のレアル・オビエドは3部にいた。さらに深刻だったのは、資本不足でクラブが解散手続きへ進みかねないことだった。クラブは1株10.75ユーロで世界から出資を募る。約2万人が193万ユーロ分を買い、その後にメキシコのカルソ・グループが200万ユーロを投じた。救済は「ファンか富豪か」の二択ではなく、役割の違う資金が順番に重なった出来事だった。
1株でも、本物の株主になった
レアル・オビエドはSAD、つまり株式会社として運営されるスペインのプロクラブだ。2012年の増資では、11月3日から17日まで株式を販売した。国籍の制限はなく、1株から買えた。4株以上を持てば株主総会に出席できると案内された。応援のための寄付ではなく、少額でも所有者になる仕組みだった。クラブが当初示した必要額は190万5000ユーロ。届かなければ、解散を議題にする株主総会を開く可能性があった。
60か国を超えた約2万人
2週間で、60か国を超える約2万人が合計193万ユーロ分の株式を買った。海外から参加しやすくしたのがPayPalだった。米国オレゴン州の小学校長シーバ・ローソンは、地元ポートランド・ティンバーズのサポーター仲間が100株を買ったら、オビエドの紋章のタトゥーを入れると約束した。100株は1日で集まった。地域クラブの危機が、別の国のサポーターの日常へ届いた具体例だ。
最後の日に、200万ユーロが加わった
小口購入だけで、解散回避に必要な短期の水準は越えたと当時の報道は伝えている。そのうえで締め切り日の11月17日、カルロス・スリム氏の企業集団カルソ・グループが200万ユーロを出資した。こちらは、危機を越えた後の資金余力と大株主をクラブにもたらした。小口株主は最初の壁を越え、大口投資はその先を支えた。二つを同じ「救済金」とだけ呼ぶと、この順番が消えてしまう。
人数が多くても、票が同じ重さとは限らない
増資後の持株比率は、サポーター全体が40.81%、カルソ・グループが34.22%だった。残りはControl Sportが12.41%、オビエド市が8.40%、セルソ・ゴンサレス氏が4.16%。約2万人という人数は参加の広さを示すが、議決権は保有株数に応じる。小口株主が最大のまとまりになっても、一人の大口株主と同じように意思をそろえられるとは限らない。
PayPalは、一度きりで終わらなかった
2015年に再び増資した際も、クラブはPayPalでの購入を用意した。その時点で株主は3万6000人を超え、86か国に広がっていたという。2012年の仕組みは、危機の一夜だけの募金窓口ではなく、遠方の株主が再び資本参加できる入口として残った。少額の所有と大口の安定資金。その両方を抱えたことが、オビエドの救済を単純な美談ではなく、クラブ経営の話にしている。
