2万3000人の94%が差別語になり得ると認め、55%は現状を支持した トッテナム「Y-word」調査のねじれ
94%と55%。正反対に見える数字が、同じ調査に並んだ。イングランドのトッテナム・ホットスパーが2万3000人を超える回答を集めると、94%は「Y-word」がユダヤ人への差別語になり得ると認めた。一方、55%はサッカーの場で当時の使い方を続けることに賛成した。矛盾というより、言葉の歴史と現在の届き方を別々に尋ねた結果だった。
差別を受けた側が、自分たちの呼び名にした
Y-wordは、英語圏でユダヤ人を侮辱する語に由来する。北ロンドンのクラブ、トッテナムはユダヤ人コミュニティーとの結びつきが強く、サポーターは1970年代末ごろから、相手側の反ユダヤ的な罵声を跳ね返す自己呼称として使い始めた。やがてユダヤ人ではないファンも「スパーズ」の仲間を示す言葉として唱えた。差別への抵抗から生まれたことが、単純な使用禁止への反発につながった。
94%と55%は、別の問いへの答え
クラブが2019年末に始めた調査には、会員や関係者ら2万3000人超が答えた。94%が、この語はユダヤ人に対して人種差別的に使われ得ると回答した。一方、サッカーの文脈で当時の使い方を続けることに満足していた人は55%。23%は使用を減らし、22%はやめることを望んだ。「差別語になり得るか」と「自分たちが使い続けたいか」は、同じ質問ではない。
ユダヤ人回答者も、一枚岩ではなかった
ユダヤ人と答えた層では、58%が使用の縮小や終了に反対した。26%は終了、16%は縮小を支持したと、Jewish Chronicleは報じている。少数派コミュニティーの内部でも、自己呼称として守りたい人と、侮辱語が広がることを止めたい人がいた。外から「当事者の意見」を一つにまとめると、この違いを見落とす。
クラブは2022年、「次へ進む時」と表明した
トッテナムは2022年2月10日、ファンに使用を減らし、この語から離れるよう求めた。クラブの公式発信では使わず、公式ショップでもシャツへの印字を認めない方針を示した。英国ユダヤ人代表者会議は見直しを歓迎した。クラブは教育用の「WhY Word」ハブも設け、禁止の一言だけで終わらせず、語の歴史と影響を説明する方法を選んだ。
意図がなくても、受け手は選べない
クラブは、多くのファンに相手を傷つける意図がないことも認めた。それでも少人数の対話では、この語に不快感や苦痛を覚える人がいることが分かった。抵抗の歴史は、使う側の理由を説明する。だが、その言葉が誰にどう届くかまでは決められない。94%と55%が同時に成り立った調査は、トッテナムが「意図」だけでなく「影響」も判断材料に移した理由を映している。
