売らずに贈った命名権 QPRが本拠地を15歳の育成選手の名前で呼んだ3季
ロンドン西部のクイーンズ・パーク・レンジャーズは2019年、本拠地の命名権を企業へ売らなかった。サポーター投票を経て、地域の慈善団体へ無償で渡した。競技場は3季にわたり、15歳で亡くなった育成選手キヤン・プリンスの名を掲げた。
キヤンは、QPRでプロを目指していた
QPRは、ロンドン西部シェパーズ・ブッシュを本拠とするクラブだ。長く親しまれてきた競技場名はロフタス・ロード。キヤン・プリンスは、その育成組織でプレーした15歳のストライカーだった。
2006年5月18日、キヤンは学校の外で争いを止めようとして刺され、亡くなった。父のマーク・プリンスは翌年、キヤン・プリンス財団を設立した。財団は若者への教育を通じ、ナイフ犯罪や暴力を防ぐ活動を続けている。
五つの慈善団体から、サポーターが選んだ
2019年、QPRは本拠地の命名権を地域の慈善団体へ贈る方針を決めた。サポーターから候補を募り、クラブが五つに絞る。最後の投票で、キヤン・プリンス財団が63%の支持を得た。
新名称は「キヤン・プリンス財団スタジアム」。2019-20季から使われた。寄付金を一度渡すのではない。試合予定や入場案内で繰り返される競技場名そのものを、財団の認知に役立てた。
掲げたのは、選手名ではなく「財団名」だった
名称にはキヤンの名だけでなく、「財団」まで入った。亡くなった育成選手を悼むと同時に、父とスタッフが続ける仕事を示す呼び名だった。
PFAは、イングランドのプロ選手を代表する選手会だ。その取材でQPRのクラブ大使は、名称変更を、ナイフ犯罪の危険を伝え教育する機会にしたいと説明している。競技場名が活動そのものになるわけではないが、活動を知る入口にはなった。
名前は戻った。それでも追悼は続いた
QPRは2022年5月25日、2022-23季から公式名をロフタス・ロードへ戻すと発表した。財団名を掲げたのは、2019-20季から2021-22季までの3季だった。期限が来れば呼び名は変わる。だからこそ、3季という数字は関係の終わりではなく、命名権を渡した期間を示す。
2026年5月18日、キヤンの死去から20年の日にも、クラブは公式サイトで追悼した。命名権は恒久的な記念碑ではなかったが、クラブが育成選手を記憶する関係は、その後も続いている。
